久しぶりの投稿となりました。Twitterでも騒いでますがGaNでインバータを作ったので紹介します。DCACの続きです。

GaNとは

 わざわざタイトルにしてまで強調しているGaNとは窒化ガリウムのことで、ワイドバンドギャップ半導体として期待の新材料です。青色LEDに使われてるやつです。最近ではGaNで作ったFETが出回ってきて、どうやら界隈でも使っている人がいるようです。MOSFETは構造によっていくつかの分類があり、GaNのMOSFETは横型が基本です。よくパワーMOSFETとして売っている縦型よりも高周波で駆動できるがオン抵抗が高いという感じです。GaNなら横型でもかなりオン抵抗が低くできるようです。今回使用するのはHEMT(高電子移動度トランジスタ)と呼ばれるタイプのもので、教科書的な横型MOSFETではなく、真性半導体が挟まっています。なんでもそこにできる二次元電子ガスなるものが高い移動度を持っており、高速かつ低オン抵抗になるらしいです。(よくわからない) また、ボディダイオードが存在しないためリカバリ損失が理論上無いようです。 他にもノーマリーオンのFETをカスコード接続したものなんかもあります。

実機

 今回使ったのはGaN Sytemsのチップです。研究室でゴミになってたので
実機はこんな感じです。

ゲートドライバはNCP81074Aというまあまあ強めのやつで、TLP2366で信号を絶縁しています。PWMを吐くのにATmega328Pが載っています。デッドタイムは16MHzのマイコンでは時間分解能が荒すぎて無理だったのでアナログでやりました。40nsぐらいです。
 LLCと合体するとこんな感じです。

わざわざ立てた割には空間利用率が悪いです。まあほとんどLLCのせいなんですが。

 ちなみにですが、このインバータは出力電圧を絶縁アンプでフィードバックできるようになっていて、正弦波の振幅を制御できる、、、    はずだったのですが、アンプのGND位置を間違えたため電圧が測れず、断念しました。これ自体2回目の発注ですし、もう気力と金が・・・。

動かしてみた

 400uHと100ΩぐらいのLR負荷に対する出力波形です。

問題なくスイッチングできてそうです。LLCと一体になって動作している波形は、残念ながらこれしかありません。LLC側が壊れたためです。(´・ω・`)

 とはいってもこれではよくわからないので、電源装置で駆動した場合の波形です。

80V印加時のローサイドのVgs, Vdsです。サージが大きいですが、1.5倍ぐらいなので300V印加しても耐圧が600Vであることを考えれば壊れないのは妥当ですね。ちなみに、プローブの遅延補償し忘れたので時間軸がずれてます(大問題)。まあ趣味なのでご愛嬌。

GaNの周辺回路の設計(おまけ)

 GaNは単価がとても高いのでなかなか趣味で使おうという人はいない気がしますが、一応設計指針的なものを備忘録ついでに書いておきます。

回路

 ゲートドライブは必ず正負電圧を用意します。閾値が低いうえ、dV/dtが非常に大きいため誤点弧します。ブートストラップで駆動するのは非推奨です。GaNのdV/dtに耐えられる設計になっているなら構いませんが・・・。今回は使用していませんが、アンダーシュートはフェライトビーズで緩和できます。絶縁はフォトカプラならいいですが、キャパシティブ絶縁等の場合はコモンモード耐量に注意してください。(どうでもいいけどガルバニック絶縁ってどっからどこまでなんだろう?)

 スナバ回路は周波数特性の良い受動素子のみで構成します。アクティブスナバ(RCDなど)はその素子の応答性がGaN以上でない限り意味がありません。やめておいた方がいいです。

レイアウト

 いうまでもなく極限まで配線長を短くします。表面実装のものは基板パターンに熱を逃がすことが多いと思いますが、優先して放熱パッドの周辺を広く取っておきましょう。ゲート配線も極力短くします。大抵ケルビンソースがついていると思うのでこちらは配線しやすいかと。今回の基板はこんな風になっています。

ローサイドは裏面にビアで熱を伝える、ハイサイドは上の空きスペースに・・・というつもりです。正直ハイサイドはかなり無理がある気がしますが、今回は電力的に大したことがないので大丈夫そうでした。サーモで見た感じでもハイサイドの方が発熱してましたが100℃は超えなさそうです。今回は2層基板縛りでやったのでこんなことになってますが、4層とかなら両サイドともにビアで裏面に伝えられるでしょうから、基板発注にお金をかけて解決するのがいい気がします。(金ないので・・・) GaN Systemsには表面に放熱パッドがあるものもあるので、外付けのヒートシンクを使うのも手だと思います。


 いかがでしたか? 正直ググればすぐわかるようなことしか書いてないので "いかがでしたか?" がぴったりな記事になってしまいました。次回はTRSSTC2号のSiC PFCの記事になりそうです。ではでは~